今読んでいる短編集、
太田忠司『遺品博物館』創元推理文庫)
今のところどの短編も、
最初の一行は逆説で始まります。

たとえば、
佐野知久は故郷を強く憎んでいたので、
帰郷する日を心待ちにしていた。
({川の様子を見に行く」)

あまりに多くのひとに愛されていたがために、
嶋野栄徹氏の葬儀は憎悪に満ちていた。
(「ふたりの秘密のために」)

少女は自分の余命が短いことを知っていたので、
永遠に生きようと思った。
(「不器用なダンスを踊ろう」)