昨日の一冊は、
宮部みゆき『魂手形~三島屋変調 百物語七之続~』(角川文庫)

卯の花

つまり、お竹と富吉は、
優れた水夫である七之助の影響を受けているに過ぎない。
夕陽に顔が染まるように、
焚き火のそばにいて、
煙の匂いが小袖にしみ込むように。

いくら大柄だって女なんだし、
あの人、あたしが怖かったろうに、
ちっとも怯まずに男の子を守ろうとしてた。

いいおふくろさん、いい女、
太棹の三味線で、
腹の底に響くようないい音を出すことができる、
出来物の人だった。

昨日の一冊で、
「お竹さん」が一番よかった。