昨日の一冊は、
宮本紀子『むすめの祝い膳』(文春文庫)
「煮売屋お雅 味ばなし」シリーズの第二弾です。

卯の花

お金持ちの子の家に、
あたしみたいな裏店(うらだな)の子が呼ばれていくのは場違いだって、
よくわかった。
暮しが違うって大人は言うけど、
こういうことなんだね。あたし、行かなきゃよかった。
(「旭屋のひなまつり」)

母親が持たせてくれた草もちの重箱を、
そっとお雅に渡して、
「このことはおっ母さんには黙ってて」と頼みます。
だれにも食べてもらえなった草もちの重箱を、
お雅は「わかったよ」と答えて受け取ることしかできません。