武田惇志・伊藤亜衣『ある行旅死亡人の物語』(毎日新聞出版)

卯の花

一気に読み終えて、
深い感慨がありました。

〈沖宗千津子〉の五文字。
彼女とこの世界をつなぎとめる紐帯(ちゅうたい)が、
この五文字なのだ。

人間の足跡、生きた痕跡は、
必ずどこかに残る。
そう、たとえ行旅死亡人でも、である。

“人はいつか” ではなく、
“私はいつか” 必ず死ぬのである。