千野隆司『鉞ばばと孫娘 貸金始末』(集英社文庫)

卯の花

四月八日の朝、お鈴は表通りに出た。
家にいるときかから子どものはしゃぐ声が聞こえていた。
灌仏会の甘茶を貰いに行くということで、
子どもたちははしゃいでいた。
親の手を引っ張って行く。
甘いものなどめったに口にできないから、
嬉しくて仕方がないのだ。
(第三話 灌仏会の薄闇」)

 

遠い昔、そういうことあったなあと思い出す。
花まつりの甘茶の微妙な甘さを思い出す。