やっと読み終えた単行本
伊藤比呂美『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』(毎日新聞出版)

昔、娘が中学生の頃、雲が好きで、
カメラをにぎりしめて、
いつも雲を撮っていた。

娘はそういう方面に進むのかと、
子どもの伴走者として応援もし支援もしたけれど、
娘はまったく違う方面に進んでしまう。

ついこの間、娘が言った。
「あの頃、あんなに夢中になっていたのは、
 雲がすぐ消えるからだ。
 次の瞬間には違う形になる。色もちがう。
 だから、今の、この瞬間を撮りたかった」と。
その瞬間を手の中ににぎりしめていないと不安だったくらい、
この子にとっては、日々が苦しかったのだ。

親は時に伴奏の仕方を間違える。
このこともちょっと紹介しておきたかった。