昨夜、井伏鱒二の『太宰治』(中公文庫)を読んでいたら、
「カンキョウ」という言葉が出てきました。

太宰治が森鴎外の作品に「カンキョウ」という語を見つけて言います。
「いい言葉だと思うので、今度小説を書く時に使おうと思っています」
井伏鱒二がどういう字を書くのかと尋ねると、
「緩頬」と書いて、
なんとなく嬉しい気分のときに、
頬が緩むのを言うのだと答えます。

太宰が言うには「微笑」の一歩手前だと。

「あとがき」で小沼 丹がそのことに触れて、
太宰が井伏家にやってくると、
奥さんが「津島さんがみえられましたよ」と告げる。
それを聞いた井伏の顔がまさに「緩頬」だと書いています。

なんだかいい話に思われたので紹介しました。