幸田文『雀の手帖』(新潮文庫)を読み始め、
ページをめくるごとに、
ああ、いいなあと思う表現に出逢います。

《しあわせをした》
ものが屏風だから、
ひとの頭のうしろからでもゆっくり見ることができて、
しあわせをした。
(「蔦の絵」)

《敏活》
実に受験期の若い人たちは敏活で、
まさに「打てば響く」のことば通り、
そしてなんと物知りなのだろうと驚かされるのである。
(「なんでもいい」)

《そこにある》
「そこにある」というのは有難いことだとおもう。
特別な勉学の下地がなくても、
じっと見ていれば、
きっと何かを教えてくれる。
(「そこにある」)

《こぶの上》
もののできる人を見ていると、
そのできかたに二種類あるのがわかる。
ひとつはすんなりと達成した人で、
もうひとつはこぶの上二できあがったひとである。
(「こぶの花」)