このごろテレビを見ていて、
年とったなあと思った人があります。
この人、変わらないなあと思う人もあります。
かえって若くなったと思う人さえあります。
上手に年を取った人がまれにいます。

幸田 文が『雀の手帖』に書いていました。
きのう、
長いつきあいをしてきた友人が来て、
こちらの顔や手をまじまじ見ている。
しょっちゅう見ていれば気がつかなくても、
たまに会えば、
おたがいに対手(あいて)の老いを、
目ざとく見つけるものである。
(「一本」)

昔の同僚などにばったり出会うと、
だれそれが病気だとか、
だれかれが死んだとか、
そんなことを手柄のように語る人がいる。
それが嫌だ。

私の病気もそんなふうに語られたのだろうか。
私が死んだらそんなふうに噂されるのだろうか。
嫌だ厭だ。