幸田文『季節のかたみ』(講談社文庫)
ときどき訪れてくれる中年の奥さんがあります。
老人の私を気にかけて下さるんです。
なんということない軽い雑談を一つ二つして、
さらさらと帰ってしまいます。
しっかりと平和な家庭を守ってきた人らしい力量が、
そういう軽くさらりとした態度によくあらわれているいい時間です。
(「濃淡」)

いい文章だなと思いました。
いい光景だなと思います。
いい文章だから、
いい光景が引き立ちます。