【三日だけの日記】2020・7・18
2020年07月18日
《三日だけの日記》
来月、
久しぶりの講演があります。
久しぶりなので資料の整理整頓をしました。
資料の間から、
黄ばんだ日記が出てきました。
娘たちが、
まだ小学生だったころ、
大阪に旅行したことがありました。
その時の日記です。
8/15
大阪が
いい旅行だったので
日記をつける気になった
加堂のおばさん
ヨーコさん
カズエさん
環状線の初老の婦人
天王寺で降りようと思っていたけど
あなたたちのために
鶴橋で降りて
そっちの用事を先にすませますので
お子さんを座らせてあげてください
人のぬくもりが
心に染みて
心が揺れた
この旅行中に、
下の娘が体調を崩しました。
この見知らぬ女性だけでなく、
加堂のおばさんにも、
ヨーコさん一家にも、
行き届いた心遣いをいただきました。
日記を読み返して、
そのことが、
まざまざと蘇ります。
8/16
万寿寺に墓参り
境内の掲示板
限りなき祖先に受け
限りなき子孫に伝える
我が生命かな
永山則夫の葬儀が
14日にあったそうだ
遺作の小説は
「華」だったそうだ
8/17
大阪・紀伊国屋で買った詩集を読む
『集成 昭和の詩』
髙田敏子の
いい詩があった
小さな靴
小さな靴が玄関においてある
満二歳になる英子の靴だ
忘れて行ったまま
二ヶ月ほどが過ぎていて
英子の足にはもう合わない
子供はそうして次々に
新しい靴にはきかえてゆく
おとなの疲れた靴ばかりの並ぶ玄関に
小さな靴は おいてある
花を飾るより ずっと明るい
日記は、
この三日だけで、
あとの数十ページは白紙のままです。
8/18から学校が始まりましたので、
時間の余裕も、
心の余裕も無くなってしまったのでしょう。
でも、
このときの数日、
とってもいい日々だったのだろと、
読み返して、
しみじみと思います。