《手話通訳》
私の講演、
ときに手話通訳の方が入られることがあります。

そういうとき、
必ず、
手話通訳の方に尋ねます。
「手話通訳が必要な人を把握しておいでですか?」

たいていの場合、
「わかりません」
という答えです。

私の講演でいえば、
広い会場の、
不特定多数の人に向かって、
手話通訳をなさっているの普通のようです。

でも、
先週の講演は違っていました。

いつものように、
同じ質問をしたら、
目の前に坐っておいでの方を紹介していただきました。

その場で、
「大丈夫」という手話を教わりました。

右手の場合は、
右手の指をそろえて、
指先を左胸から右胸に移動させる。
左手の場合は、
左手の指をそろえて、
指先を右胸から左胸に移動させる。
これが「大丈夫」という手話だそうです。

習いたての「大丈夫」で、
その方と、
「大丈夫?」「大丈夫!」のやりとりをしました。

「?」は小首をかしげる動作、
「!」はうなずくことで表現します。

手話通訳の方に聞くと、
手話は基本であって、
あとのニュアンスは、
体や顔や目の表情で伝えるのだそうです。

三人の手話通訳の方々が、
手話通訳を必要とする方に向かって、
手話と表情でお話なさる。
その光景こそが、
「人権教育」のあるべき姿なのだと思いました。
私が90分間お話をする何倍もの説得力をもって・・・。

自分は手話通訳が必要だと手を挙げる、
それができない場面が多いのが現実社会です。
人権教育講演会においてさえそうなのです。

なにためらうことなく手を挙げる、
そういう社会を夢見て講演していながら、
不特定多数の人に向かって手話通訳なさる会場に、
さみしさを隠せませんでした。

なので、
先週の研修会は、
ある感慨と感動がありました。