《はしのうえのおおかみ》
先週の朝日新聞、
「安倍政権 教育現場では」(上)を読んで、
記事の意図とは別に、
昨今の道徳教育に物思いしました。

「はしのうえのおおかみ」
小学校の授業公開で、
よく目にする教材です。

あらすじは割愛して、
記事を少し引用します。

  教師はオオカミの変化の理由を問いかけた。
  親切なクマとの出会いを挙げる発言が続くなか、
  ある女子児童が、
  「ウサギさん、かわいそう」
  と言った。
  教師は、
  自ら手を挙げて発言したことをほめたうえで、
  「質問をよく聞いてね」
  と返した。
  授業を補助したベテラン講師が、
  女子児童に発言の理由を聞くと、
  「オオカミに怖いことされたのに、抱っこされるのは・・・」。
  児童の真意を教師が受け止め損ねた形だが、
  「この先生だけの問題ではない」
  と講師は指摘する。
    「親切」「礼儀」など、
    一年間で学ぶ項目が多く、
    それに沿った答えを求めがちになる。


授業も、
指摘も、
私には「???」です。

そもそも、
「はしのうえのおおかみ」で、
道徳を教える意味がわかりかねます。


北野武の言葉を思い出しました。
  どうして道徳の教科書には、
  猿だの熊だの動物がやたらとでてくるのか?

  子どもが動物の絵やぬいぐるみが好きなのはわかるが、
  だからといってコオロギだのタヌキだのに、
  道徳を語らせちゃいけない。

  道徳は、
  人間のものだろう。


この記事は、
「手品師」の学習も取り上げ、
「道徳」の評価をめぐって、
東京都の小学校教諭の言葉を紹介しています。
    どんなに自分にとって大切なことをふいにしても、
    約束を守る主人公の誠実さに気付き、
    誠実であることのよさを理解することができました。
  のように、
  内容項目ごとに、
  「教材の伝える価値」
  を機械的に定型文化し、
  記入している教員が多いと指摘する。
 

芥川龍之介の言葉を思い出しました。
  良心は道徳を造るかもしれぬ。
  しかし、
  道徳は未だ嘗て、
  良心の良の字も造ったことはない。


北野武の言葉も、
芥川龍之介の言葉も、
北野武『新しい道徳』(幻冬舎)からの引用です。

はしのうえのおおかみ