《雨読》
このごろ、
どちらかというと雨模様です。

一昨日は午前中と夜、
昨日は午前中、
今朝は降っているようないないような・・・。

最近、
晴耕はないので、
単なる雨読です。

雨読で読み終えた一冊、
原田マハ『独立記念日』(PHP文芸文庫)


いいなあと思った箇所を紹介します。
 
  どうして彼を好きになったかって?
  それは、
  世の中の女子の大半がそうであるように、
  とてもささやかな理由。
  くだらない、
  って笑われてしまうかもしれない。
  けれど私は、
  彼が、
  いつも歩道のひなた側を歩いていくのが気に入っていた。

    気になってたんだ。
    さっき歩いてた歩道、
    陰になってたでしょ。
    ひなたの道を歩かなくっちゃ、
    なんだか人生もったいない。
  そう笑ってから、
  行こう、と手を指し出して、
  ごく自然に、
  冷たくなった私の手を握ったのだ。
              (「ひなたを歩こう」より)


  清掃道具を足もとに置いて、
  両手を前に組み、
  壁に背をもたれたりせず、
  きちんと立っていた。
       (「缶椿」より)

 
  幸せすぎて、
  ちょっとヘン。
  そういう状態のことを、
  「多幸症(たこうしょう)」って言うらしい。
               (「甘い生活」より)


  オトコってのはな。
  あったかいハートがあればいんだ。
  ずうっとまえに、
  そう忠告してくれた父の言葉を思い出す。


  翌朝、
  朝食のテーブルで、
  私の顔を見るなり、
  お父さんが言った。
  衣里(えり)。
  オトコを顔で選んだら、
  そのうちイタいめにあうぞ。

  「飛んでいく先を選ぶもんだな、青い鳥っていうのは」
  その夜、
  父が私にそう言った。
          (「幸せの青くもない鳥」より)


  一生けんめい生きている人こそが、
  自分に寄り添うべき人である。
  幸せの青くもない鳥は、
  そうわかっているのです。
  そんなふうに言ってくれた。
  お宅を辞して、
  空を見上げた。
  夕焼けに、
  ほっと息を放つ。
  その瞬間に、
  涙がこぼれた。
   
  私の胸はときめいた。
  自由、になるんじゃない。
  独立、するんだ。
  ややこしい、いろんな悩みや苦しみから。
             (「独立記念日」より)  

裏表紙の言葉そのままの一冊でした。
  寄り道したり、
  つまずいたりしながらも、
  独立していく女性たちの姿を、
  鮮やかに描いた、
  24の心温まる短編集。

本の帯の言葉どおりの一冊でした。
  昨日までの私に
  サヨナラできる一冊