《たいした大人》
昨夜の読書、
朝比奈あすか『君たちは今が世界(すべて)』(角川書店)

君たちは今が世界(すべて)

少し気になる箇所がいくつかありました。

  わたしがこの子どもたちと同じ歳だった頃、
  担任の先生が言った。
  ・・・皆さんは、どうせ、たいした大人にはなれない。


  わたしたちは、たしかに悪かった。
  だけど、
  皆いっしょくたにされて、
  「たいした大人にはなれない」
  と言われるほどだっただろうか。


  ところが、
  人間というのは緩やかに変化をしてくるもので、
  十年が経ち、
  当時の先生の年齢を超えた今、
  少しずつ、
  わたしの中に違う考えが芽生えてきたのである。
  ・・・皆さんは、どうせ、たいした大人にはなれない。
  あの時のあれは、
  彼女なりに思いを持ってぶつけた、
  真摯な言葉だったのかもしれない、
  とさえ思うようになったのだ。


  わたしの母から花束を受け取った彼のお母さんは、
    この子、本番がだめなの。
    気が弱いから。
    練習では弾けたんだけど・・・
  と、しきりに言った。
  彼の前で、
  彼のピアノの腕ではなく、
  精神面を貶(けな)した。


私が教えた生徒たちは、
「たいした大人」になれただろうか?

彼らを教えた私は、
「たいした大人」だったのだろうか?

そして今、
「たいした大人」であると言えるだろうか?