《秋の詩歌(うた)》

雨の朝、

雨の庭を歩いていたら、

昨夜の風で風鈴の糸がからまっていました。

ふと、

飯田蛇笏の俳句が口をついて出ました。

  くろがねの秋の風鈴鳴りにけり

そう思って、

記憶をたどると、

季節季節に、

あるいは折に触れて、

完璧ではないものの、

ふと口ずさむ詩歌(しいか)が、

案外あるなあと思います。

  秋深き隣は何をする人ぞ  松尾芭蕉

  この道や行く人なしに秋の暮れ  松尾芭蕉

  春の海ひねもすのたりのたりかな  与謝蕪村

  菜の花や月は東に日は西に  与謝蕪村

  あの月をとってくれろと泣く子かな  小林一茶

  めでたさも中位なりおらが春  小林一茶

  いくたびも雪の深さをたづねけり  正岡子規

  万緑の中や吾子(あこ)の歯 生え初(そ)むる  中村草田男

  学問のさびさしさに堪へ炭をつぐ  山口誓子

  てまりうたかなしきことをうつくしく  高浜虚子 

  赤い椿 白い椿と落ちにけり  河東碧梧桐

  啄木鳥(きつつき)や落葉をいそぐ牧の木々  水原秋桜子

  咳の子のなぞなぞあそびきりもなや  中村汀女

  生きかはり死にかはりして打つ田かな  村上鬼城

  をりとりてはらりとおもきすすきかな  飯田蛇笏

  水枕ガバリと寒い冬がある  西東三鬼

  咳をしても一人  尾崎放哉

  うしろすがたのしぐれてゆくか  種田山頭火

正確を期すために、

この本で確かめました。

詩歌

俳句だけでも、

かなりの数になりました。

短歌と詩は、

またの機会ということにします。