《うろおぼえ索引》

少し前に紹介した『教科書でおぼえた名詩』(ネスコ)には、

「うろおぼえ索引」という便利なものが巻末に付いています。

今回は、

うろおぼえの和歌を、

その索引に助けてもらって、

いくつか思い出そうと思います。

この索引、

初句だけでなく、

よく口ずさまれる途中の句でも探せます。

たとえば、

「いわばしる・・・」でも、

「・・・もえいずる」でも、

177ページに、

早春といえば口をついて出る、

あの歌が見つかります。

  石(いわ)ばしる垂水(たるみ)の上のさわらびの萌えいずる春になりにけるかも  志貴皇子(しきのみこ)

 

そんなふうに、

うろ覚えながらも頭の片隅やら、

心の奥底に残っている和歌を、

万葉集から少々。

  春過ぎて夏来(きた)るらし白妙(しろたえ)の衣ほしたり天の香具山  持統天皇

  東(ひんがし)の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月傾ぶきぬ  柿本人麻呂

  田児の浦ゆ うち出て見れば真白にぞ不尽(ふじ)の高嶺に雪はふりける  山部赤人

  吾妹子(わぎもこ)が植ゑし梅の木見るごとに心むせつつ涙し流る  大伴旅人

  防人に行くは誰かと問ふ人を見るが羨(とも)しさ物思(ものも)ひもせず  防人歌

 

中学校や高校で習った先生や、

高校で教えた日々を思い出して、

切ないような、

息苦しいような、

そんな気持ちになります。

不思議なことですが、

夜汽車の窓から、

遠い家の灯りを見つけたような、

ほのかな温もりと懐かしさも、

ぽっぽっぽと湧いてきます。

詩集