《蔵書印》

古本屋さんで井出孫六を見つけました。

『その時この人がいた』井出孫六(毎日新聞社)

買って帰って、

ペラペラとめくっていたら、

巻末に「安藤」という蔵書印がありました。

62.2.24に丸三書店で購入したとあります。

本の発行が昭和62年2月10日ですので、

「62」は「1962年」ではなく「昭和62年」です。

でも、

本には一か所の傍線も折り目もなく、

きれいな読み方だなあと思いました。

それに引き換え、

私の読書は極めて汚い読み方です。

今日の夕方に読み終えた時代小説、

梶ようこ『五弁の秋花~みとや・お瑛仕入帖~』(新潮社)

梶

いつものように、

赤ボールペンの傍線がいたるところにあります。

その中から少しだけ引用します。

  兄さんは行ってくるよとは決していわない。

  お父っつぁんとおっ母さんが、

  「行ってくるよ」といって、

  橋の崩落で死んだからだ。

  帰らないのに、

  行ってきますは、

  待つ者にとって辛過ぎる・

 

  生きていくには、

  食べること、

  食べるためには働くことだと、

  十一のときに知った。

 

  頑張らなくてもいいし、

  忘れなくてもいい。

  悲しみだって無理に乗り越えることなんかない。

  

  悪いことが起きると、

  世の中で自分が一番だと思えてくる。

 

先週、出会った人は、

自分の辛さを吐き出したあと、

  こういうとき、

  誰もがそう思うでしょうけど、

  なんで私なんでしょうねえ?

そう言って黙り込んだ姿が、

この一行で思い出されました。