《偶々》

ipadが使えなくなって、

寝起きに偶々(たまたま)思い至ったこと。

不便になったなあということより、

便利なもんだったんだなあということ。

偶々で思い出した漢詩。

     偶成    朱熹

  少年易老学難成

  一寸光陰不可軽

  未覚池塘春草夢

  階前梧葉已秋聲

 

「偶成(ぐうせい)」、

たまたま作った詩という意味。

 

少年老い易く学成り難し

一寸の光陰軽んずべからず

未だ醒めず池塘春草の夢

階前の梧葉既に秋聲

 

しょうねんおいやすくがくなりがたし

いっすんのこういんかろんずべからず

いまださめずちとうしゅんそうのゆめ

かいぜんのごようすでにしゅうせい

 

池のほとりでとろとろとまどんでいたら

いつのまにか桐の葉を秋風が揺らしていた

 

口に出してそらんずることができる漢詩は、

それでもいくつかありますが、

漢字で全部を書ける詩はこの詩のみです。

 

教育実習の初日、

いきなり授業をして来いと、

指導してくださる先生に言われて、

初めて出会った3年背の前で、

この漢詩を物語りました。

 

教育実習、

最初の一週間は、

いろんな先生の授業を見学するのだろうと思っていました。

 

なんでもいいから1時間やって来いと言われ、

覚えている漢詩がこれしかなかったので、

黒板にこの詩を書いて、

青春の光と陰、

思春期の希望と不安、

人の世の喜びと虚しさ、

そんなことを語ったように思います。

 

今日、

ここに、

この詩を思いついたのは偶々(たまたま)ですが、

この詩が心にずっとあるのは偶々ではありません。