《誠実な》

高校生だったころ、

井上靖が高校で講演をしました。

小説とモデルの関係のような話でした。

奥深い話でした。

井上靖らしい話でした。

 

もう一つ忘れられないのは、

昼食をどこかの料亭で用意しようという話になった時、

「そういう食事より田舎の素朴な弁当が食べたい」と、

そう井上靖が言ったという話。

しばらく経ってから、

国語の先生に教えてもらいました。

 

先日、

西宮から季節の贈り物が届きました。

「丹波篠山 黒枝豆」

こんな説明書きが入っています。

  丹波黒大豆が成熟して黒豆になる前の青い若い枝豆が、

  丹波黒若さやです。

  一般に出回っている枝豆とは一味違い、

  丹波黒大豆特有のコクと甘みがあります。

  ご賞味いただける期間がごく短く限られており、

  丹波篠山市の秋の味覚として珍重されています。

 

この家族からは、

早春のいかなごのくぎ煮と、

晩秋の黒枝豆を、

季節の味として送ってもらいます。

井上靖が「田舎の素朴な弁当」なら、

「誠実な家族の厚意」と呼ぶにふさわしい贈り物です。

黒枝豆