寝床の中で、
youtubeから流れる「NHKラジオ文芸館」を聞きました。
昨夜は浅田次郎の『告白』でした。

高校生のアズサは父親のことを「アイツ」と呼びます。
それを親友のナミが、
「おやじのこと、アイツって呼ぶの、やめなよ」と、
たしなめます。

ここからアズサの告白が始まります。
告白その1「だって本当のおとうさんじゃないもの」
告白その2「お父さんから毎月おこづかい振り込まれてるの」
小学1年のときは1000円、
小学2年には2000円、
そんなふうに学年が上がるごとに1000円ずつ増えていきます。
高校生の今は毎月9000円、
総額が70万円にもなっています。

告白その3「もうやめなよ。わかってんだから。自分のコートでも買いなよ」
雪の日、
迎えに来たアイツに、そう言います。
それが告白その3でした。
アイツが本当のおとうさんの名前で振り込んでくれていることを、
アズサはもうずいぶん前から気付いていました。

チェーンをかけるのがめんどくさいからと、
歩いて迎えに来たアイツの背中におぶさって、
この日最大の勇気を振り絞って、
アズサがアイツのことを初めて「おとうさん」と呼びます。
それが告白その4。

聞き終わって、
高校生の女の子が、
母親の再婚相手の背中におんぶされて、
降りしきる雪の中を家路に向かう・・・、
その姿が何かしら得難い風景として、
いつまでもいつまでも残りました。