昨日から読み始めた小説、
原田マハ『翔ぶ少女』(ポプラ社)
原田マハ

最初の方に、
こんな個所があります。
  あの子がニケちゃん?
  うん、あの子や。
  あの子、地震でな、足、大けがしてんて。
  ほんで、ちゃんと歩けへようになってしもてんて。
  ほんでな、お父さんとお母さん、家の下敷きになって、死んでしもてんて。

  「しんさいこじ」になってもうてな。
  知らんおっちゃんに、引き取ってもろてんて。
  いまは、そのおっちゃんと「かせつ」にすんどぉねんて。
  ふうん、かわいそうやな。
  せやねん、かわいそうやねん。
  せやから、友だちになってあげへんかったら、あかんやろ?

  おはよう。ニケちゃん、今日も、ばっちり、遅刻せぇへんかったね。
  すごいなあ。
  ほんま、ニケちゃん、すごい。
  絶対、遅れへんもん。
  ふつうに歩いたって、学校行くのめんどくさいのになあ。
  えらいなあ。ニケちゃんすごいなあ。

   なんでほめるん?
   あたしは、みんなとおんなじように、ただ、学校に来ただけやん。

   ニケががんばとぉの、お父ちゃんとお母ちゃん、見てくれとぉやんね。
   せやけど、あたし、ときどき、もうしんどいわ、って思うねん。
   こんなにしんどいんやったら、お父ちゃんとお母ちゃんがいるとこに、
   天国にいったほうがええかなって、思うねん。
   あたし、もう歩きとぉないねん。
   飛びたいねん。
   飛んでいきたいねん。お父ちゃんのとこに。お母ちゃんのとこに。
   なんで・・・、飛んでいったらあかんの?

言う人と言われる人。
言われる人は言い返せないことが多いので、
思う人になってしまう。

言う人は言いっぱなし。
言う人は言いたい放題。

言われる人は、
身構えたり、
ちぢこまったり、
固まったり、
泣きそうになったり、
我慢できずに泣いてしまったり、
そして、
思うだけの人になってしまう。
「なんで?」「なんで?」と心で叫びながら・・・。

でもニケは翔(と)ぶと思います。
翔(か)けあがると思います。
飛ばないで翔ぶと思います。
原田マハだから・・・。