けさ読み終えた原田マハ『生きるぼくら』(徳間文庫)

マハ
こんな個所があって強く濃く傍線を引きました。
  それは、
  最近まったく耳にしていなかった「あっち側」の世界に住む人間の言葉のように聞こえた。
  「あっち側」とは、「いじめる側」だ。
  言い換えれば、「勝ち組」だ。
  そこに属する人間は、
  いつも高飛車で、他人に容赦がなく、
  自分のひと言で誰かが傷ついたり、
  ときには再起不能なほど追い詰められたりすることを、
  想像することができない。
  人への思いやりなどというものをかけらも持っていないのに、
  合理的に、計算高く生き延びる。
  ずる賢く、打たれ強い。
  そして、根拠はなくとも、
  いつも何かに対して勝ち誇って生きているのだ。
  子供の世界ばかりでなく、
  いまや大人の世界にもはびこっているいじめが露呈しにくいのは、
  「あっち側」の人間がそれを周到にしかけているからだ。
  彼らは計算高いので、
  自分の点数が減点されるようなやり方ではしかけない。
  家族にも学校にも会社にも、
  絶対にわからないようなやり方で、
  誰かを傷つけ、追い詰める・
  それでいて、
  罪悪感など微塵も持たないのだ。

自分の来し方を振り返っても、
今まで関わった小学生・中学生・高校生の顔を思い浮かべても、
ときには大人の世界で生きづらい人に思いを馳せても、
確かに確かにと納得する。