小川糸『とわの庭』(新潮社)
今日は「マリさんのものがたり」をしたいと思います。
  だからわたし、もっと前から気づいてたんです。
  あそこに、女の子がいる、って。
  そのことを、どうしてもあなたに謝りたくて。
  本当にごめんなさい。
  あの時、あなたが苦しんでいたのに、
  わたし、わかってて何もしなかったの。
  事件のことを知って、
  すぐにあの家の女の子のことだ、って気づきました。

昔、『ムッちゃんの詩』という映画がありました。
米倉斉加年がこんなセリフを言う場面があります。
  おまえたちはみんな知っていたんだ。
  あの洞窟に女の子が一人でいるのを。
  知っていて何もしなかった。
  おまえたちがあの子を殺したも同然だ。

そして、
自分自身の来し方を重ねました。
「わかってて何もしなかった」ことのある私の来し方を。
 
とわ