【続々・残酷でありながら】2020・12・11
2020年12月11日
小川糸『とわの庭』(新潮社)
最後は「母のものがたり」とします。
だいじょうぶ、泉はけっしてかれないから。
あんしんして、わたしのそばで、ぐっすりおやすみ。
思い出した。
紙に書いてある母の文字は読めないけれど、
母の声は、この胸に生きている。
わたしは、この詩を口にしていた時の母の心情を、ようやく理解した。
母は、わたしを愛していたのだ。
わたしが母を愛したように、
母もわたしを愛してくれていた。
途中からそれが横道にそれただけで、
最初は母も、わたしを純粋に愛していた。
比類なき残酷なものがたりですが、
この上なく救いのものがたりです。