久しぶりに「おけら長屋」を読みました。
7、8巻までは真面目に真面目に読んでいましたが、
いつのころからかご無沙汰でした。
いつの間にか15巻になっていました。

畠山健二『本所おけら長屋』(PHP文芸文庫)の最新刊。
おけら

お栄が煮た大根を口にした涼介が、
  美味い。
  この前の芋の煮っ転がしといい、この大根といい、
  身体だけでなく心まで温かくなってくるような気がします。

と言ったとき、松吉が言います。
  なぜだかわかりますかい。
  おけい婆さんも、
  この店のお栄ちゃんも、
  作ってる人の心が温(あった)けえからですよ。
  それに、
  塩でも砂糖でも出汁(だし)でもねえ、
  とっておきの隠し味があるんでね。
  涙ですよ。
  長屋暮らしの貧乏人なんてえのは、
  みんな心の中に悲しみや苦しみを抱えて生きてるんでさあ。
  だから、
  鍋の中に涙が一粒、流れ落ちるんで。
  心根(こころね)の優しい人には、
  その涙の味がわかるんですよ。
時代小説には、
こういう場面、
こういう会話、
こういう人情が、
よくあるものです。
そこが、
時代小説のいいところです。
それが、
本屋さんでついつい手に取って、
ペラペラとめくっただけで買ってしまう理由でもあります。