今朝、
読み終えた小説をぺらぺらと読み返していて、
ああ、こういうことってあるだろうなあ~と、
改めて思った個所がありました。
伊佐が幼いころ、
伊佐の母親は、
伊佐を残して長屋を出て戻らなくなります。
伊佐は何日も母親を待ち続けます。
手を差し伸べる長屋の住人もありましたが、
母親は戻ってくると信じたい伊佐は、
部屋を離れること嫌がります。
  部屋の戸に六尺棒をおいて、
  だれも入れないようにした。
そのうち、
食べ物も無くなり、
空腹と心労と憔悴で倒れてしまいます。
  だが、結局、母親は戻って来ず、
  牡丹堂に来ることになった。
  伊佐は部屋を出る代わりに、
  心の中に壁をつくって閉じこもることにしたのだろうか。

戸口にこさえた壁は、
外から打ち壊すこともできますが、
心の中の壁は内から開けるのを待つしかない。

今月に入って、
家から出ることと引き換えに、
心を閉ざした高校生と対峙したばかりなので、
この小説のこのページのこの数行が、
深く鋭く心に刺さりました。 
旬1