【ものもひ】2021・1・31
2021年01月31日
手許にある「古語辞典」(旺文社)によると、
ものもひ【物思ひ】→ものおもひ。
ものおもひ【物思ひ】いろいろ思い悩むこと。うれい思うこと。心配すること。
「ものもひ」の用例として、この歌が載っています。
夕さればものもひまさる見し人の言問ふ姿面影にして (万葉集・巻四・605)
笠 女郎(かさのいらつめ)が大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌だそうです。
夕暮れ時になると、物思いが増してきます。
かつてお会いした人が、
私にやさしい言葉をかけてくださったあの姿が目に浮かんできて。
というような意味でしょうか?
私のものもひ。
入院している彼のこと。
自宅で闘病なさっているあの方のこと。
人生の大事を生きている娘たちのこと。
日々ものもひしている妻のこと。
我が子の今と行く末を案じるあの人この人のこと。
ままならぬ世情のこと。
自分の病気のこと。
自分が老いていくこと。
自らが死ぬるということ。
そして明後日の講演のこと。
ものもひは尽きません。
今朝、読み終えた時代小説。
篠 綾子『菊のきせ綿~江戸菓子舗照月堂~』(ハルキ文庫)に、
和歌が引用されていました。
あぢきなし嘆きなつめそ憂きことに あひくる身をば捨てぬものから
「了然尼」が解釈しています。
仕方のないことだから、あまり思いつめて嘆かないで。
つらい目に遭ったその身を捨てもせずにいながら。
・・・というような意味でしょうか。
「なつめ」は思います。
つまり、
了然尼は思い通りにいかなくても
嘆くなと言いたいのだ。