【小さいほうだ】2021・3・7
2021年03月07日
今年に入って、
床に仰向けになって、
最後は腹ばいになって、
筋トレをしています。
腹筋や前屈や腕立てなどなど。
寝転んだ状態で、
顔を横に向けると、
丁度、本箱の最下段が見えます。
ああ、こんな本があったのかと、
新鮮な発見です。
正岡子規が病床で詠んだ歌。
瓶(かめ)にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり
もうちょっとなのに届かない、
蒲団に寝て見たから知ったのです。
ちょうどそんな感じの本箱の最下段。
『クオレ~愛の学校~』下(偕成社文庫)
アミーチス:作
矢崎源九郎:訳
その中に、
記憶している限り、
人生最初の読書があります。
「難破船(さいごの毎月のお話)」
小学校低学年のころ、
友だちの家に遊びに行ったとき、
彼の家で見つけて、
一心に読んだ記憶があります。
少年マリオや船長が、
とっても勇気ある人に思われて、
自分にこういうことができるだろうか?・・・と、
船に乗るのが恐くなった記憶があります。
「大ボートをおろせ」
と、船長はさけびました。
船長は甲板にのこっていました。
「いっしょにおのりなさい」
と、下からみんながさけびました。
「わしは、自分のもち場で死なねばならん」
と、船長がこたえました。
「おのりなさい。あなたは死んでしまいますよ」
「わしはのこる」
「もうひとりのれる!」
「女の人をひとり!」
「じゃ、子どもをひとり!」
「小さいほうだ!」
この子のほうがかるいんです。
きみだよ、ジュリエッタ!
きみにはお父さんもあるし、
お母さんもある!
ぼくはひとりぽっちだ!
きみにゆずるよ!
「その子を海になげてくれ!」
少女はふたたび頭をあげて、
海の上を見わたしました。
が、船はもう影もありませんでした。
人生最初の読書らしい読書が、
この「難破船」だったことは、
その後の私の人生に少なからぬ影響を与えたと、
今になって、そう思います。