今年に入って、
床に仰向けになって、
最後は腹ばいになって、
筋トレをしています。
腹筋や前屈や腕立てなどなど。

寝転んだ状態で、
顔を横に向けると、
丁度、本箱の最下段が見えます。

ああ、こんな本があったのかと、
新鮮な発見です。

正岡子規が病床で詠んだ歌。
  瓶(かめ)にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり

もうちょっとなのに届かない、
蒲団に寝て見たから知ったのです。

ちょうどそんな感じの本箱の最下段。
『クオレ~愛の学校~』下(偕成社文庫)
アミーチス:作
矢崎源九郎:訳
旬1

その中に、
記憶している限り、
人生最初の読書があります。

「難破船(さいごの毎月のお話)」

小学校低学年のころ、
友だちの家に遊びに行ったとき、
彼の家で見つけて、
一心に読んだ記憶があります。

少年マリオや船長が、
とっても勇気ある人に思われて、
自分にこういうことができるだろうか?・・・と、
船に乗るのが恐くなった記憶があります。
  「大ボートをおろせ」
  と、船長はさけびました。

  船長は甲板にのこっていました。
  「いっしょにおのりなさい」
  と、下からみんながさけびました。
  「わしは、自分のもち場で死なねばならん」
  と、船長がこたえました。

  「おのりなさい。あなたは死んでしまいますよ」
  「わしはのこる」

  「もうひとりのれる!」
  「女の人をひとり!」

  「じゃ、子どもをひとり!」

  「小さいほうだ!」
    この子のほうがかるいんです。
    きみだよ、ジュリエッタ!
    きみにはお父さんもあるし、
    お母さんもある!
    ぼくはひとりぽっちだ!
    きみにゆずるよ!

  「その子を海になげてくれ!」

  少女はふたたび頭をあげて、
  海の上を見わたしました。
  が、船はもう影もありませんでした。

人生最初の読書らしい読書が、
この「難破船」だったことは、
その後の私の人生に少なからぬ影響を与えたと、
今になって、そう思います。