今日の昼下がり読書で、
相沢沙呼『教室に並んだ背表紙』(集英社)を読み終えました。

宍道湖1

生きづらい女子中学生どうしが、
あるいは、
そんな彼女たちに寄り添う学校司書が、
教室とは違う図書室という空間で、
思春期の一時期を、
優しく激しく、
温かく冷ややかに、
緩やかに鋭く紡ぎ出す世界が描かれています。
  自分だったらって考えたら、
  こんなの、ほっとけないじゃん。
  でもさ、
  あの子に対して、
  どうしていいのかわかんないし、
  あたしになんかできることなんて、
  あんまりないしさ・・・

   それなら、きっと簡単だよ。

  簡単って?

   わたしにしてくれたことを、
   してあげて。

  「先生・・・。助けて」
  瞼(まぶた)を閉ざしたまま、わたしは声をあげる。
  かすれて、醜くて、今にも消えてしまいそうな声で、
  「助けてよ。あたしを、助けてよ」
  わたしの祈りに、先生は言った。
  「大丈夫。先生が助ける。先生が助けるよ」

学校司書の方々は、
学校司書が登場する物語なんて、
あんまり読みたくないのかもしれない。
でも、
学校司書になりたいと思っている中学生や高校生が読んだら、
きっと背中を押してもらうだろうと思います。
そんな物語でした。

「教室に並んだ背表紙」
図書室に並んだ本の背表紙・・・という意味の他に、
教室に並んだ同級生の背中・・・という意味も込められていると、
私は勝手の思いながら読みました。
  あたしは、
  きっと誰かにあたしを読んでもらいたい。
  ほんの僅かな間でもいい、
  そのひとさし指でこの背に触れて、
  窮屈な書架から抜き出してほしかった。
  あたしという物語を好きになってほしかった。

  あたしはこの胸の書架に、
  素敵な本をたくさん収めておきたい。
  あたしが好きな本を、
  好きになってくれた人と、
  話をしてみたかった。
  あたしは、その背に指をのばす。
  そうして、ゆっくり、
  一冊の本を書架から引き抜いていった。