夕方のFDAを迎える。

旬1宍道湖1

春の空が暮れなずむ。

       ぼくの家だけあかりがともらない
                   野長瀬 正夫
    丘の畑から ながめていると
    どこの家にも でんきがついた
    それなのに どうしてだろう
    ぼくの家だけ、あかりがともらない
    みわよ
    ゆう子よ
  おかあさんはぐあいでもわるいのか
  それとも、お使いにいってまだかえらないのか
  そんなときはふたりで、えっさ、えっさ、
  台所のこしかけをもってくるんだよ
  ちゃぶ台の上にのっかって
  ぱちんと、スイッチをひねってもいいんだよ
  丘の畑から ながめていると
  きいろい月見草の花がひらくように
  谷間の村の あちこちに
  ぽっ、ぽっ、ぽっと、でんきがついた
  それなのに どうしてだろう
  ぼくの小さな家だけ、あかりがともらない
  それが気になって気になって
  あとひと畝(うね)をのこしたまま
  だんだん畑をかけおりた。
      (小林信次・水内喜久雄:編『子どもといっしょに読みたい詩』あゆみ出版)

花2


夕餉が華やぐ。

  温かいおつゆが匂っている
  おいしくつかったたくあんづけがある
  子供たちはもう箸をならべている
  ああ飯台一つ買ったことが
  こうも嬉しいのか
  貧しいながらも貧しいなりに
  ふとってゆく子の涙ぐましいまで
  いじらしいながめである
      坂村真民「飯台」より
         (坂村真民『念ずれば花ひらく』サンマーク出版)