連休も折り返し、
連休の読書も三冊目。
中島久枝『日之出が走る~浜風屋菓子話(二)~』(ポプラ文庫)
旬1

お利玖が姉のことを語ります。
  私がこうして元気でいられるのは、
  姉が私の業(ごう)を全部背負ってくれたからだ。

  騙したり、裏切ったり、蹴落としたり、
  人に言えないようなことを散々やってきた。
  その恨み、つらみを姉が私の代わりに受けてくれている。
  昔からそうだった。
  姉は心のきれいな、やさしい子でね、
  海岸に打ち上げられた魚がかわいそうだって、
  涙を流すような子だった。
  だから、
  もういいよ、もういいよって言ってもさ、
  私の代わりに罪を受けてくれているんだ。

  やせ細って骨の形が見えるようだ。
  肌は薄くなって真綿で触れても血がにじむんだ。
  それでも私が行くと、
  こうパッと目を開いて見るんだよ。
  頑張りな。
  頑張りな。
  あんたはあたしの誇りだよ。
  あたしの分も、
  兄さんや姉さんの分も生きて、
  うまいもの食べて贅沢して、
  楽しい日を送るんだよ。
  のどから絞り出すような声で言うんだ。

心が温かく冷え、
魂が冷たく温もりました。