【連休の読書】2021・5・3
2021年05月03日
連休も折り返し、
連休の読書も三冊目。
中島久枝『日之出が走る~浜風屋菓子話(二)~』(ポプラ文庫)
お利玖が姉のことを語ります。
私がこうして元気でいられるのは、
姉が私の業(ごう)を全部背負ってくれたからだ。
騙したり、裏切ったり、蹴落としたり、
人に言えないようなことを散々やってきた。
その恨み、つらみを姉が私の代わりに受けてくれている。
昔からそうだった。
姉は心のきれいな、やさしい子でね、
海岸に打ち上げられた魚がかわいそうだって、
涙を流すような子だった。
だから、
もういいよ、もういいよって言ってもさ、
私の代わりに罪を受けてくれているんだ。
やせ細って骨の形が見えるようだ。
肌は薄くなって真綿で触れても血がにじむんだ。
それでも私が行くと、
こうパッと目を開いて見るんだよ。
頑張りな。
頑張りな。
あんたはあたしの誇りだよ。
あたしの分も、
兄さんや姉さんの分も生きて、
うまいもの食べて贅沢して、
楽しい日を送るんだよ。
のどから絞り出すような声で言うんだ。
心が温かく冷え、
魂が冷たく温もりました。