今週の紙上歌壇・俳壇から、
素直にああいいなあと思った作品をいくつか。
  花柄のブラウスを着て家を出る欠席続く生徒に会う日 (岸和田市)西村 史 【朝日歌壇】

  愉快なこと書いてあるらしクスクスと佐藤愛子読む妻の笑ふ声  米子 倉井正喜 【山陰文芸】

  包丁を使わずぐぐっと大福を半分こして夫に渡す  つくば市 岩瀬悦子 【読売歌壇】

  入学式終わったらしい小学校  箕面市 浦川澄恵 【読売俳壇】

  あかすぎる夕焼け空が目にしみて生きているって生きているって  前橋市 アサヒナ 【毎日歌壇】

  萌え出ずる若草色の靴でゆくポプラ並木のそよぐキャンパス  札幌市 住吉和歌子 【毎日歌壇】

  亡き母へ便りまだ来る遅日かな  入間市 加藤嘉風 【毎日俳壇】

「遅日(ちじつ)」という季語、
春の日の暮れが遅いことと意味は知っていましたし、
その季語も、同意の季語も目にしてはいましたが、

恥ずかしい話ですが、
ずっと「おそび」と読んでいました。
蕪村の「遅き日のつもりて遠き昔かな」が心に深く残っていたからでしょうか?

日暮れが早かった冬が少しずつ春めき、
だんだんに日暮れが遅くなる、
それが遅日の気持ちでしょうから、
母亡き後も、
母宛に手紙が届く、
その光景は、
やっぱり、
「素直にああいいなあ」なのだと思いました。