【取り返しのつかないもの】2021・5・23
2021年05月23日
最近、
Youtubeで、
「昭和の日本」と題されたシリーズ映画を観ています。
いずれも舞台は昭和20年代と思われます。
「風光る日に」に始まって、
「小さな町の小さな物語」
「おばあちゃんあやまる」
「お母さんの幸福(しあわせ)」と続き、
昨夜は「今どきの嫁」を観ました。
モノクロの映画です。
テーマはそれぞれ違いますが、
総じて貧しい時代です。
生活も苦しい時代です。
そして子どもが多く誰もひもじい。
「風光る日に」の中に、
こんなセリフがありました。
夏の夕暮れ、
堀端を歩いていると、
風が吹いてきて、
やがて吹き去っていった。
吹き去った風は二度と触れることができない。
自分だけが深い井戸の底に取り残された気がした。
この世には、
こうした取り返しのつかない虚しさがあると、
それが心にしみた。
そんな思い出話というか述懐が語られていました。
おそらく、
人は幼少期のどこかで、
これに似た喪失感を実感するときがあるように思います。
それが大人の入口なのかもしれません。
そうして、
限りある人生の扉を開けるのでしょう。
子どものころ、
家の裏の小川を流れていた落ち葉が、
土管の中に吸い込まれるのを見たとき、
私もそんな感覚を持ちました。
世の中には、
もうどうにもならないことがあるのだという感覚。
過ぎ去って帰り来ぬものがあるのだという実感。
どうしても取り返せないことがあるという喪失感。
映画の流れとかテーマとは別に、
この喪失感というか虚しさに、
久しぶりに心がしんとして、
思いがたゆたいました。