旬1
「青春と読書」(集英社)の4月号に、
松家仁之『泡』(集英社)の紹介が載っています。
  高校二年になってまもなく、
  学校に行けなくなった薫は、
  夏のあいだ、
  大叔父・兼定のもとで過ごすことに。
    (中略)
  言い知れぬ「過去」を持つ大人たちと過ごすうち、
  一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる・・・。

昨日の毎日新聞に、
谷 瑞恵『神さまのいうとおり』(幻冬舎)の紹介が載っていました。
  バラバラな家族を救ってくれたのは、
  曾祖母の“暮らしの知恵”だった。
    (中略)
  会社を辞めて主夫になった父親。
  そんな父親が恥ずかしい思春期の娘。
  何も相談してくれない夫との関係に悩む母親。
  一家は曾祖母の住む田舎に引っ越すことになり・・・。

私はこういう物語が無条件に好きなのです。
こういう話を読むと、
心がしーんとして、
魂がじーんとして、
体がずーんとするのです。

「青春と読書」の6月号に、
『我は、おばさん』(集英社)の著者・岡田 育さんのインタビュー記事が載っています。
  よき「おばさん」の条件の一つが、
  若者に有形無形の贈り物を授ける年長者であること。
  たとえば『更級日記』の著者・菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)は、
  名もなきおばさんに『源氏物語』を授けられて人生が変わります。
  実生活に必要なものを用意する「おかあさん」に対し、
  「非・おかあさん」は、
  母親とは異なる価値観を提示します。

  「ゆかしくしたまふなる物」をあげましょうというおばさんの言葉が出てきます。
  実用品や必需品は母親が用意するだろうから、
  私はあなたが欲しい(ゆかし)ものをあげましょうと。

『更級日記』の本文ではこのようになっています。
  何をかたてまつらむ。
  まめまめしき物は、まさなかりなむ。
  ゆかしくしたまふなる物をたてまつらむ。
    何をさしあげましょう。
    実用むきの物ではつまらないでしょう。
    欲しがっておいでとか伺った物を差し上げましょう。
現代語訳は、
『日本古典文学全集』(小学館)第18巻、
「和泉式部日記・紫式部日記・更級日記・讃岐典侍日記」によりました。

親ではない存在、
たとえば伯父伯母(叔父叔母)、
あるときは大叔父や曾祖母といった父母ではない親族が、
幼き者の人生を大きく変えてくれます。
あの例の「親族の基本構造」です。

「青春と読書」の新連載、
関口 尚「虹の音色が聞こえたら」では、
沖縄出身の女子高生と三線が、
10歳の少年を生きづらい家庭から連れ出してくれそうです。

昨日いただいたハガキに、
こんな文言が書いてありました。
わかっていらっしゃる‼
  中村家の家族がふえた?
  株分けがズンズンと進んでると思ってたら、
  さらに小株ができて、
  無事お宮にもいけた。
  ・・・充分、充二分にすてきですが、
  ナ、ナント、家族の基本形が再現されたんですね。
  そんなキセキがあるんですね。