【青春と読書】2021・5・30
2021年05月30日
「青春と読書」(集英社)の4月号に、
松家仁之『泡』(集英社)の紹介が載っています。
高校二年になってまもなく、
学校に行けなくなった薫は、
夏のあいだ、
大叔父・兼定のもとで過ごすことに。
(中略)
言い知れぬ「過去」を持つ大人たちと過ごすうち、
一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる・・・。
昨日の毎日新聞に、
谷 瑞恵『神さまのいうとおり』(幻冬舎)の紹介が載っていました。
バラバラな家族を救ってくれたのは、
曾祖母の“暮らしの知恵”だった。
(中略)
会社を辞めて主夫になった父親。
そんな父親が恥ずかしい思春期の娘。
何も相談してくれない夫との関係に悩む母親。
一家は曾祖母の住む田舎に引っ越すことになり・・・。
私はこういう物語が無条件に好きなのです。
こういう話を読むと、
心がしーんとして、
魂がじーんとして、
体がずーんとするのです。
「青春と読書」の6月号に、
『我は、おばさん』(集英社)の著者・岡田 育さんのインタビュー記事が載っています。
よき「おばさん」の条件の一つが、
若者に有形無形の贈り物を授ける年長者であること。
たとえば『更級日記』の著者・菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)は、
名もなきおばさんに『源氏物語』を授けられて人生が変わります。
実生活に必要なものを用意する「おかあさん」に対し、
「非・おかあさん」は、
母親とは異なる価値観を提示します。
「ゆかしくしたまふなる物」をあげましょうというおばさんの言葉が出てきます。
実用品や必需品は母親が用意するだろうから、
私はあなたが欲しい(ゆかし)ものをあげましょうと。
『更級日記』の本文ではこのようになっています。
何をかたてまつらむ。
まめまめしき物は、まさなかりなむ。
ゆかしくしたまふなる物をたてまつらむ。
何をさしあげましょう。
実用むきの物ではつまらないでしょう。
欲しがっておいでとか伺った物を差し上げましょう。
現代語訳は、
『日本古典文学全集』(小学館)第18巻、
「和泉式部日記・紫式部日記・更級日記・讃岐典侍日記」によりました。
親ではない存在、
たとえば伯父伯母(叔父叔母)、
あるときは大叔父や曾祖母といった父母ではない親族が、
幼き者の人生を大きく変えてくれます。
あの例の「親族の基本構造」です。
「青春と読書」の新連載、
関口 尚「虹の音色が聞こえたら」では、
沖縄出身の女子高生と三線が、
10歳の少年を生きづらい家庭から連れ出してくれそうです。
昨日いただいたハガキに、
こんな文言が書いてありました。
わかっていらっしゃる‼
中村家の家族がふえた?
株分けがズンズンと進んでると思ってたら、
さらに小株ができて、
無事お宮にもいけた。
・・・充分、充二分にすてきですが、
ナ、ナント、家族の基本形が再現されたんですね。
そんなキセキがあるんですね。