原田マハ『ゴッホのあしあと』(幻冬舎文庫)を、
やや時間がかかりましたが、
昨夜やっと読み終えました。
旬1

四月に『モネのあしあと』(幻冬舎文庫)が出たので、
急いだのですが、
いささか時間がかかりました。

原田マハさん、ゴッホに酔っているなあ~と思って、
ちょっと引いてしまい、
ゴッホに酔っている自分に酔っているのかなと思うと、
ちょっとついていけなくて、
文庫本一冊に何日もかかりました。

でも、心の底から思います。
酔えるものがあるのはいいなあと・・・。
酔えるものがある人生は幸せだろうなと・・・。

「あとがきにかえて」は、
「失われた春」と題されて、
去年の7月に書かれています。
  2020年春。
  世界中の多くの人たちにとって、
  これほど忘れがたい春はこの先訪れないだろう。
  新型コロナウイルスの感染が顕在化したのは、
  今年一月、中国でのことだ。
  当初は局地的な感冒のようなものだろうと、
  ほとんどの人がさほど大ごととはとらえていなかった。
  しかしこのウイルスはグローバル化の波に乗って、
  日本へ。アジアへ、全ヨーロッパへ、全米へ、
  最後にはほぼ全世界へと到達してしまった。
  その後、
  世界が体験したこの見えざる敵との闘いは、
  2020年7月現在、
  なお終わりが見えない。

「失われた春」どころか、
その後、
夏も秋も冬も失われてしまいました。
今となっては「失われた一年半」⁉

『ゴッホのあしあと』に、
忘れられない言葉がいくつかありました。
  たゆたえども沈まず
十代の頃、
愛読していた本の中にこの言葉があったのだそうです。
  美しい響きゆえか、
  ずっと消えずに心のどこかにあった。

パリ市を象徴するエンブレムの紋章に、
“Fluctuat nec mergiur”
というラテン語が記されていて、
  このラテン語を誰が訳したのか知りませんが、
  大変美しい日本語で、
  「たゆたえども沈まず」と訳されています。

こんな表現もされています。
  革命があり、
  災害があり、
  戦争があっても、
  パリはそのたびに、
  たゆたいこそすれ、
  沈むことはなかった。
  不死鳥のようによみがえった。

こんな一文も心に残りました。
  嵐のときは小舟になればいい。
  たゆたいこそすれ、
  決して沈まずに。

時間はかかりましたが、
読み終わってみたら、
豊かなる時間でした。