本の整理をしていて、
以前、買った本を見つけました。
買ったものの全く読んでいない本でした。
『ワガコ』大和田美帆(新潮社)
旬1

「ワガコ」を妊娠した日から、
「ワガコ」を出産した日のこと、
「ワガコ」を育てる日々が、
ほんとうにすなに書かれていますが、
おしまいの方に、
母・岡江久美子の思い出が書かれています。
「暑い暑い夏に、母は母になった」
  なかなか降りてこなかったので、
  緊急で帝王切開をすることになったという。
  お医者さんがお腹を開いてみてびっくり。
  私の首にへその緒がしっかりと巻き付いてしまっていたのだ。
  そりゃどんなに促進剤を打ったって産まれてこないはずだ。
  それどころか、
  私の生命の危機だったのだ。
  家族がオロオロする中でも、
  母は落ち着いていて、
  手術後の傷跡を気遣う医師に向かって、
    どうせ子供の頃から怪我ばっかりで、
    傷だらけなので、
    なんでもいいんです。
  と答えたという。

「母のモットー」
  例えばドラマの撮影なので、
  泊りの地方ロケがある時、
  撮影が予定より早めに終わった日は、
  普通はホテルに泊まって次の日の撮影に供えるのだが、
  母は地方から新幹線か飛行機で、
  一時、東京に戻ってきて私との時間を作り、
  また次の日に地方へ戻るという手段を選んでいた。
彼女はまだ幼ったので、
父・大和田 獏から聞いた話だそうです。

母・岡江久美子のモットーは、
「自分が苦しくならないこと」
「自分がしたいことを自由にしたいだけすること」
だったそうですが、
仕事と子育てを「両立しなければ」という義務感より、
「両立させたい」という願望の方が大きかったであろうと、
娘の心で書いています。

そして最後は、
こんな言葉でしめっくっています。
  母はどんなことがあっても、
  母の人生を楽しんでいる。
  それだけは間違いがなかった。

昨年の4月23日、
新型コロナウイルスに感染して亡くなりました。
あれからもう一年以上が経つのだと思って、
「ワガコ」に登場する「岡江久美子」が、
心にしみました。