宮川ひろ『母からゆずられた前かけ』(文溪堂)を読み終えて、
ぜひとも紹介したい個所がありました。
宮川さんの息子さんの話。
彼が小学校一年生の四月、
「はじめての父母会」に参加したとき、
担任の先生から言われた言葉。
  おかあさん、宮川くんはね、お帰りのしたくがおそくて、困るんです。
自分が叱られたように恐縮して、
帰宅後、息子さんに「もっと早くできないの?」と尋ねます。
息子さんの答えを読んで、
この子、いい子だなあと思いました。
なんてすてきに小学生を生きているんだろうと思いました。
  ぼくねえ、ランドセルの中へ、
  本とノートを背の順に入れるんだ。
  いちばん背が高いのが理科の練習ノートでね。
  そのつぎが音楽の本だよ。
  算数と国語の本はね、同じくらいなんだ。
  だからね、
  床の上にたてて頭をなでてみたんだよ。
  そうしたら、
  算数のほうが少し高いようだったから前にしたんだ。
  きのうはね、
  本、ノート、本、ノートってならべたんだよ。
  その前の日は、
  本、ノートノートってやったんだけどね、
  そうしたらノートがたりなくなっちゃってさ・・・

その息子さんが父親になったとき、
こんなことを口にしたそうです。
  なにもかも、よくできる子でないほうがいい。
  どうしてもうまくできないものがあって、
  でも、
  その劣等感につぶされないような、
  一つだけはだれにも負けないようなものをもっている、
  そんな子がいいな・・・。

  うん、この程度がいちばんいいよ。
  できない人のいたみもわかるしね。

すてきな小学生がすてきな大人になったんだと、
心の底から嬉しくなりました。
旬1