【母からゆずられた前かけ】2021・6・12
2021年06月12日
宮川ひろ『母からゆずられた前かけ』(文溪堂)を読み終えて、
ぜひとも紹介したい個所がありました。
宮川さんの息子さんの話。
彼が小学校一年生の四月、
「はじめての父母会」に参加したとき、
担任の先生から言われた言葉。
おかあさん、宮川くんはね、お帰りのしたくがおそくて、困るんです。
自分が叱られたように恐縮して、
帰宅後、息子さんに「もっと早くできないの?」と尋ねます。
息子さんの答えを読んで、
この子、いい子だなあと思いました。
なんてすてきに小学生を生きているんだろうと思いました。
ぼくねえ、ランドセルの中へ、
本とノートを背の順に入れるんだ。
いちばん背が高いのが理科の練習ノートでね。
そのつぎが音楽の本だよ。
算数と国語の本はね、同じくらいなんだ。
だからね、
床の上にたてて頭をなでてみたんだよ。
そうしたら、
算数のほうが少し高いようだったから前にしたんだ。
きのうはね、
本、ノート、本、ノートってならべたんだよ。
その前の日は、
本、ノートノートってやったんだけどね、
そうしたらノートがたりなくなっちゃってさ・・・
その息子さんが父親になったとき、
こんなことを口にしたそうです。
なにもかも、よくできる子でないほうがいい。
どうしてもうまくできないものがあって、
でも、
その劣等感につぶされないような、
一つだけはだれにも負けないようなものをもっている、
そんな子がいいな・・・。
うん、この程度がいちばんいいよ。
できない人のいたみもわかるしね。
すてきな小学生がすてきな大人になったんだと、
心の底から嬉しくなりました。