「図書」(岩波書店)6月号を届けていただきましたので、
さっそく読みました。

心をよぎった個所を、
断片の形で引用します。

  高知から松山行きのバスに乗れば、
  四国の原生林が見られると、
  大江健三郎さんから聞いていたので(後略)
        (司 修「生まれて初めて見た笑顔の夢」より)

  私は小田川に沿った道を走り、
  大江さんの生家のある大瀬を見て過ぎ(後略)
        (司 修「生まれて初めて見た笑顔の夢」より)

  民博は少年時代の思い出の場所であり、
  私の処女作のタイトルにもなった太陽の塔の近くにあり(後略)
              (森見登美彦「壮大な物語群との出会い」より)

  『源氏物語』は西日本の物語である。
          (田村 隆「『源氏物語』と地図」より)

  そもそも、
  『源氏物語』には旅の道行きに関する記述が少ないことが従来から指摘されている。
  以下は源氏が須磨に下る場面である。
    道すがら面影につと添ひて、
    胸もふたがりながら、
    御船に乗り給ひぬ。
    日長きころなれば、
    追風さへ添ひて、
    まだ申(さる)の時ばかりに、
    かの浦に着き給ひぬ。(須磨)
  「乗り給ひぬ」の次の文は、
  「着き給ひぬ」であり、
  船旅の風情などは記されていない。
  むしろ出立前の別れについて丁寧に描かれる。
        (田村 隆「『源氏物語』と地図」より)