昨日の読書。
泉 ゆたか『髪結百花(かみゆいひゃっか)』(角川書店)
旬1

切なく悲しい話だった。
  赤ん坊にお乳をやってくれる女(ひと)が、
  どうしても見つからなった。
  二日目の日が落ちる頃になると、
  赤ん坊の身体に漲(みなぎ)っていたとんでもない生命力にも、
  暗い陰りが見え始めた。
  赤ん坊が泣き声を上げるたびに、
  砂糖水を温めたものを綿に浸して口に運んでやっていた。
  しかし最初の一口は噛(かぶ)り付くような勢いなのに、
  すぐに口を離してしまう。
    (中略)
  アサが持って帰った山羊の乳を、
  真新しい綿に浸す。
  祈るような思いで、
  歯のない赤ん坊の唇にそっと這(は)わせる。
  赤ん坊はほんの一瞬だけ綿に喰い付いてから、
  すぐに、これではないというように脱力する。
     (中略)
  「紀ノ川花魁(おいらん)! お乳をくださる女(ひと)が見つかりましたよ!」

女の人が仕事で活躍する話かと思って読み始めたけれど、
もちろんそういう個所もあるにはありますが、
読後感としたら、
「切なく悲しい」かなあ。