【髪結百花】2021・9・24
2021年09月24日
昨日の読書。
泉 ゆたか『髪結百花(かみゆいひゃっか)』(角川書店)
切なく悲しい話だった。
赤ん坊にお乳をやってくれる女(ひと)が、
どうしても見つからなった。
二日目の日が落ちる頃になると、
赤ん坊の身体に漲(みなぎ)っていたとんでもない生命力にも、
暗い陰りが見え始めた。
赤ん坊が泣き声を上げるたびに、
砂糖水を温めたものを綿に浸して口に運んでやっていた。
しかし最初の一口は噛(かぶ)り付くような勢いなのに、
すぐに口を離してしまう。
(中略)
アサが持って帰った山羊の乳を、
真新しい綿に浸す。
祈るような思いで、
歯のない赤ん坊の唇にそっと這(は)わせる。
赤ん坊はほんの一瞬だけ綿に喰い付いてから、
すぐに、これではないというように脱力する。
(中略)
「紀ノ川花魁(おいらん)! お乳をくださる女(ひと)が見つかりましたよ!」
女の人が仕事で活躍する話かと思って読み始めたけれど、
もちろんそういう個所もあるにはありますが、
読後感としたら、
「切なく悲しい」かなあ。