突然、獅子文六(ししぶんろく)が読みたくなって、
『自由学校』(新潮文庫)と、
『娘と私』(新潮文庫)を買いました。

『娘と私』は娘の誕生から始まります。
  だが、今は、男女の別なぞ、問題でなく、
  ただ、“初めて子を持った”という意識で、
  頭も、胸も一杯だった。
  私は、一心に、“わが子”を覗(のぞ)き込んだ。
  小さな、小さな存在だった。
  普通の赤ン坊のように、真ッ赤ではなく、
  眼が大きく、繊細な手を動かし、
  口からバラ色の舌を、少し、現わしていた。
  ジッと見ていると、
  私は胸の扉が、音を立てて開き、
  私の魂が抜け出して、
  赤ン坊の中へ入っていくような気持になった。

数ある我が子の誕生を記した文章の中でも、
出色(しゅっしょく)のものだと思われました。

旬1