夜ごと読み進めて、
58章のうち12章までたどり着きました。

サマセット・モーム『月と六ペンス』(新潮世界文学 31)
訳:田中西二郎、中野好夫、上田 勤、龍口直太朗
旬1
  ストリックランドといえば、
  四十のはずだ。
  この齢になって、
  いまさら恋愛事件をおこすなどというのは、
  むしろ不快な感じさえした。
  若気の思い上がった気持ちから、
  僕は、
  せいぜい三十五歳をもって。
  男が恋愛をして物笑いにならないですむ最後の限界だと、
  決めこんでいた。

  「絵が描きたいんだよ、僕は」

  「僕は言ってるじゃないか、描かないじゃいられないんだと」
  「自分でもどうにもならないのだ」
  「水に落ちた人間は、泳ぎが巧かろうと拙かろうと、そんなこと言っておられるか」
  「なんとかして助からなければ、溺れ死ぬばかりだ」

これまで何度も挑戦して、
その度に挫折したモーム、
中途で放り出してきた『月と六ペンス』、
今回はどうやら読み終えることができそうだ。