「疫病と文学」の最後は、
ホメロス『イリアス』(岩波文庫)です。

旬1
  第11話で、
  彼(マカオン)は、
    医者というものは、
    矢を抜いたり、
    痛みを癒す薬を塗るなど、
    他の者幾人にも値するものですからな。
  と声をかけられる。
  医師が「まじない師」ではなく、
  合理的な治療を施す存在として認識されていたのが面白い。(池澤夏樹)

  『イリアス』にも、
  今の表現で言う「リスク行動」に及ぶ人物が登場し、
  疫病の感染が広がっていく。
  その思慮のなさも含め、
  人々の行いを群像的に描き出したと考えると、
  本書は最古の疫病文学であり戦争文学だと思った。

『イリアス』『オッデュセイア』と、
世界史の時間に対にして覚えた作品が、
実はこういう内容だったんだと、
何十年もの時を経てくっきり理解した次第です。