昨日の朝日新聞に、
林真理子が「瀬戸内寂聴さんを悼む」を寄稿しています。
  ある時、
  先生が私にこうおっしゃった。
    真理子さん、
    作家というのは死んでしまえば、
    次の年には、
    本屋から本が一冊もなくなってしまうものなのよ。

    私の本の中で残るのは、
    おそらく源氏物語の訳だけでしょね。
  この自己分析のすごさ、客観性が、
  瀬戸内寂聴という人なのであった。

その『瀬戸内寂聴訳 源氏物語』(講談社)巻十の巻末、
「源氏のしおり」に瀬戸内寂聴さんが、
こんなことを書いておられて、
まっとうな読み方をなさっていると門外漢ながら思います。
  「浮舟」の帖は、
  小説としての出来映が、
  五十四帖中、
  「若紫」と並ぶ圧巻で、
  どうしても読み落とせない名篇である。

  この最後の四帖には、
  紫式部の小説家としての天分が、
  まさに開花しきったという見事さと安定感を感じさせられる。