きのう届けていただいた冊子、
「ちくま」12月号(筑摩書房)の連載小説、
窪 美澄「TIME OF DEATH、DATE OF BIRTH」(16)から、
老若の会話を引用します。

  私が若い頃は、
  未来はなんというか、
  ずーっと先まで照らされているみたいに明るくて、
  いいことしか起こらないと信じていたの。
  いつかきっといいことがある、
  って心から信じて生きてきた。
  時代もそういう時代だったしね・・・・

    ・・・昭和の頃ですか?

  そうだね、その頃かな。
  ・・・戦争には負けたけど、
  日本に生まれて良かったなって、
  心からそう思えた時期ね。
  だけど、
  自分だけじゃなくて、
  いつの間にか、
  まわりも貧しくなってしまったような気がして。
  いつからそうなってしまったんだろう・・・

    で、で、でも、
    僕たち、その時代を知りません。
    生まれてきてからずーっとこんなだし。

  そうよね、
  あなたたちにとっては、
  どんな時代だって未来があるものね。
  ごめんさい、こんなこと言って・・・
  先に生きているものが、
  こんなこと言ったらだめだよね。
旬1
寒い朝、
黙って読んで、
しばし黙考しました。