【読み終えて(5)】2021・12・4
2021年12月04日
原田マハ『常設展示室』(新潮文庫)を読了。
登場するいくつかの絵画を色紙に描かせてもらったり、
ここにも取り上げたり、
来客と話題にしたり、
いろいろと楽しませてもらいました。
最後の話は「道」でした。
予想通り、
東山魁夷の「道」でしたが、
それは脇役で、
主役は「エントリーナンバー29」に描かれた道の絵でした。
ええ、書きかけです。
わかっています。
けれど、
審査員のうち、ひとりだけ、
きっと気づいてくれる人がいます・・・
誰がそれを描いたのかを。
「あなたのことでしょうか?」
西川教諭が訊いた。
翠は黙ってうなずいた。
(中略)
混濁する意識の中で、
明人は、彩、と娘に呼びかけた。
ずっと、秘密にしてたんだけどな。
お父さんには妹がいるんだ。
・・・たったひとりの。
だから、
お父さんがいなくなっても、
お前はひとりじゃないんだよ。
秘密にしてて・・・ごめんな。
それが父から娘への、最後の言葉だった。
「あなたのことでしょうか?:
もう一度、西川教諭が訊いた。
翠の頬を流れる涙が、
その答えだった。
この最後の話には、
この場面以外にも、
何度か涙しました。