原田マハ『常設展示室』(新潮文庫)を読了。
旬1
登場するいくつかの絵画を色紙に描かせてもらったり、
ここにも取り上げたり、
来客と話題にしたり、
いろいろと楽しませてもらいました。

最後の話は「道」でした。
予想通り、
東山魁夷の「道」でしたが、
それは脇役で、
主役は「エントリーナンバー29」に描かれた道の絵でした。
    ええ、書きかけです。
    わかっています。
    けれど、
    審査員のうち、ひとりだけ、
    きっと気づいてくれる人がいます・・・
    誰がそれを描いたのかを。
  「あなたのことでしょうか?」
  西川教諭が訊いた。
  翠は黙ってうなずいた。
      (中略)
  混濁する意識の中で、
  明人は、彩、と娘に呼びかけた。
    ずっと、秘密にしてたんだけどな。
    お父さんには妹がいるんだ。
    ・・・たったひとりの。
    だから、
    お父さんがいなくなっても、
    お前はひとりじゃないんだよ。
  秘密にしてて・・・ごめんな。
  それが父から娘への、最後の言葉だった。
  「あなたのことでしょうか?:
  もう一度、西川教諭が訊いた。
  翠の頬を流れる涙が、
  その答えだった。

この最後の話には、
この場面以外にも、
何度か涙しました。