【たけ】2021・12・9
2021年12月09日
「たけ」と太宰の再会の場面。
久し振りだなあ。
はじめは、わからなかった。
金木の津島と、うちの子供は言ったが、
まさかと思った。
まさか、来てくれるとは思わなかった。
小屋から出てお前の顔を見ても、
わからなかった。
修治だ、と言われて、あれ、と思ったら、
それから、口がきけなくなった。
運動会も何も見えなくなった。
三十年近く、
たけはお前に逢いたくて、
逢えるかな、逢えないかな、
とそればかり考えて暮らしていたのを、
こんなにちゃんと大人になって、
たけを見たくて、
はるばる小泊までたずねて来てくれたかと思うと、
ありがたいのだか、
かなしいのだか、
そんなことは、どうでもいいじゃ、
まあ、よく来たなあ、(後略)
(太宰 治『津軽』より)
こういう人がいるということ、
人生の宝物だなって思う。