「たけ」と太宰の再会の場面。
  久し振りだなあ。
  はじめは、わからなかった。
  金木の津島と、うちの子供は言ったが、
  まさかと思った。
  まさか、来てくれるとは思わなかった。
  小屋から出てお前の顔を見ても、
  わからなかった。
  修治だ、と言われて、あれ、と思ったら、
  それから、口がきけなくなった。
  運動会も何も見えなくなった。
  三十年近く、
  たけはお前に逢いたくて、
  逢えるかな、逢えないかな、
  とそればかり考えて暮らしていたのを、
  こんなにちゃんと大人になって、
  たけを見たくて、
  はるばる小泊までたずねて来てくれたかと思うと、
  ありがたいのだか、
  かなしいのだか、
  そんなことは、どうでもいいじゃ、
  まあ、よく来たなあ、(後略)
         (太宰 治『津軽』より)

こういう人がいるということ、
人生の宝物だなって思う。

旬1