【万葉集】2022・1・1
2022年01月01日
中学校のときの元日は登校日でした。
万葉集を二首、
体育館に集まって、
学校こぞって朗詠して、
みかんを二つもらって帰る。
元日の恒例行事でした。
今でも覚えている歌が二首あります。
あらたしき年の始めの初春の 今日降る雪の重(し)け吉事(よごと)
田子の浦ゆ うち出て見れば真白にぞ 不尽(ふじ)の高嶺に雪は降りける
「あらたしき」の歌は、
万葉集4516首の中の最後に位置する歌で、
作者は万葉集を編纂したと言われる大伴家持。
齋藤茂吉が『万葉秀歌』(岩波新書)の中に書いています。
家持の歌は万葉初期の歌に比べると質が劣るけれども、
もしこれを古今集以後の幾万の歌に比べるならば、
これはまた徹頭徹尾、
較(くら)べものにならない。
それほど万葉集の歌は佳いものである。
「田子の浦ゆ」の歌は、
万葉初期の山部の赤人の歌です。
静岡県富士市の田子の浦は富士山を眺める名所だったそうです。
茂吉はこの歌を「赤人作中の傑作」と褒め、
こうも言っています。
赤人のものは総じて健康体の如くに、
清潔なところがあって、
だらりとした弛緩(しかん)がない。
元日というと、
決まってこの二首を思い出し、
知らず知らず心が清々しくなります。
今でも朗詠できる数少ない万葉歌です。
万葉集二首と蜜柑二つ、
誇らしい元日の記憶です。