【大きなゴール】2022・1・8
2022年01月08日
読もう読もうと思いながら、
なかなか手が出なかった小説を、
昨夜から読み始めました。
2月の講演で話題にしようと思い立ったからです。
朝井リョウ『正欲』(新潮社)
私は気付いていきました。
(中略)
世の中に溢(あふ)れている情報はほぼすべて、
小さな河川が合流を繰り返しながら、
大きな海を成すように、
この世界全体がいつの間にか設定している、
大きなゴールへと収斂(しゅうれん)されていくことに。
その“大きなゴール”というものを端的に表現すると、
「明日は死なないこと」です。
目に入ってくる情報のほとんどは、
最終的にはそのゴールに辿り着くための足場です。
(中略)
私たちはいつしか、
この街には、
明日死にたくない人たちのために必要な情報が、
細かく分裂して散らばっていたのだと気づかされます。
それはつまり、
この世界が、
【誰もが「明日、死にたくない」と感じている】
という大前提のもとに成り立っていると思われている、
ということでもあります。
身の回りに溢れている情報を、
そんなふうに考えたことは一度もありませんでしたが、
言われてみれば確かにその通りだなと、
心に染み入るように納得しました。
この世情に晩年を生きることに、
確かなる希望と勇気が持てました。