昨夜の読書は山村美紗でした。
『百人一首殺人事件』(光文社文庫)

旬1
なんとも切ない場面がありましたが、
推理小説なので、
事件の展開が分からないように引用します。

  君が、別れて暮らしていた兄さんに、
  会ったときのことから話してもらおうか。
    私、兄の住所を調べて、手紙を出したんです。
  いつのことだね?
    中学三年のときです。
    父は、お酒の飲み過ぎで、
    肝臓をやられて仕事もできなくなっていたので、
    思いあまって、手紙を出しました。
  返事は来たのかね?
    はい、夏休みになったら、
    遊びにおいでと書いてありました。
    それに、少しでしたけど、
    お金も入っていました。
    あのときは、本当に嬉しくて・・・。

  それで、夏休みに会ったんだね?
    はい。
  どんな話をしたの?
    いろんなことです。
    父のことも、私自身のことも、
    みんな話しました。
    兄は、
    今は、学生なので、何もしてやれないが、
    来年、就職したら、
    私も父も引き取って、
    面倒みてやるといってくれたんです。
    京都の街も案内してくれました。
    私が、生まれて初めて食べるような、
    おいしいものもご馳走してくれました。

ああ、せつないなあと、
思い思いしながら読みました。