【山村美紗】2022・1・9
2022年01月09日
昨夜の読書は山村美紗でした。
『百人一首殺人事件』(光文社文庫)
なんとも切ない場面がありましたが、
推理小説なので、
事件の展開が分からないように引用します。
君が、別れて暮らしていた兄さんに、
会ったときのことから話してもらおうか。
私、兄の住所を調べて、手紙を出したんです。
いつのことだね?
中学三年のときです。
父は、お酒の飲み過ぎで、
肝臓をやられて仕事もできなくなっていたので、
思いあまって、手紙を出しました。
返事は来たのかね?
はい、夏休みになったら、
遊びにおいでと書いてありました。
それに、少しでしたけど、
お金も入っていました。
あのときは、本当に嬉しくて・・・。
それで、夏休みに会ったんだね?
はい。
どんな話をしたの?
いろんなことです。
父のことも、私自身のことも、
みんな話しました。
兄は、
今は、学生なので、何もしてやれないが、
来年、就職したら、
私も父も引き取って、
面倒みてやるといってくれたんです。
京都の街も案内してくれました。
私が、生まれて初めて食べるような、
おいしいものもご馳走してくれました。
ああ、せつないなあと、
思い思いしながら読みました。